カメラで写真撮影する際にレンズの絞りを広げるほどフォーカスが合っていない所でのボケが大きくなります。レンズのスペックには必ずその明るさを示す開放F値が記載されています。この開放F値が小さいほど、絞りを開くことができるようになり、大きなボケを得ることができるようになります。
ここまでは広く知られており、少しでもカメラで遊んだ事がある方であればなんとなく知識として知ってることと思います。このボケが欲しくて開放F値が小さい高価なレンズが欲しくなってしまうものです。
しかしなぜF値が小さいと大きなボケが得られるか、あまりそのあたりを分かりやすく説明しているサイトが無かったので、ボケが得られる仕組みを直感的に理解できるように図を使って整理してみようと思います。式とかなしです。
絞りの基本的な役割
まずは絞りそのものの役割を確認してみます。広く知られている一般的なお話しです。
レンズには通常センサに入ってくる光の量を調整するための絞りと呼ばれる機構がついています。この絞りを開いたり絞ったりすることで光量を調整し適切な明るさの写真が撮れるようになります。
この絞りをより大きく開くことができるレンズほど取り込むことができる光が多い明るいレンズと呼ばれ、暗い場所での撮影に有利になります。
レンズのスペックとして、画角を示す焦点距離と合わせて必ず記載があるのが、絞りの最大を意味する開放F値です。このF値の数値が小さいほど、絞りを開く事ができる様になります。
この絞りにはもう一つ大きな役割があります。この絞りを調整することで、被写体のピントの合う範囲を調整することができるようになります。ピントの合う範囲を被写界深度といい、絞るほど深く(ピントが合う範囲が広く)、開けるほど浅くなります。
一般的にいわれる絞りの役割はこんな所かなと思います。
よく見る図がこんな感じのものだと思います。
絞りが光の量やシャッター速度に影響するのは直感的に分かります。しかしこのボケ具合(被写界深度の深さ)はいまいち直感的ではありません。少なくとも自分にとっては。
レンズの仕組みを少し確認しながらこの辺りを直感的に理解してみようと思います。
レンズがセンサに像を結ぶ仕組み
絞りの話に行く前にレンズが像を結ぶ基本的な原理とピントに関しておさらいします。
図の様にレンズに対して直角に入ってくる複数の光の束(光束)がレンズで屈折し、集まる点を焦点といいます。普通のレンズであればどこかにその点が存在します。理科で習いました。
水色の楕円がレンズで、線が光の線だと思ってください。レンズの後ろの〇で示した点が焦点です。
続いてレンズの後ろのセンサの上に被写体(鉛筆)がどのように像を結ぶかを図示したものです。これもまぁよく見かける図です。
レンズに直行する光は焦点を通過し、レンズの中心を通る光は屈折せずまっすぐ進みます。
太線がそのレンズに直行する光と中心を通過する光です。
このように鉛筆の頂点からの複数の光束がレンズに向かい、レンズの色々な箇所を通過した後に、センサ上の一点に集まります。これがいわゆる鉛筆にピントが合っている状態です。
ピンぼけ
続いてピントが外れている状態を考えてみます。
先ほどのピントがびったり合った状態から鉛筆を少し長くし、位置も後ろにずらしてみます。奥にずれるのでピントが外れるのは直感的に分かると思います。先ほどの図と同じように光束を引いてみます。
レンズ直行の光は焦点を通り、レンズ中心は直進するとすると、鉛筆の像が結ばれる位置がセンサ面より少し前になります。そして肝心のセンサの上ではある幅を持ってしまいます。これがいわゆるピンボケです。
ちなみにピント合わせはレンズを微妙に前後させることで、レンズとセンサの距離を調整し、実現させます。この場合は少しだけレンズを後ろにすればピントが合いそうです。
上のピントが外れた状態を説明した図中、センサに赤で示した範囲に鉛筆の頂点の像が広がります。もちろん本来はセンサは面なので頂点の像は円形に広がります。この幅がボケ量になります。鉛筆が遠のけば遠のくほど赤の幅は広がります。
絞り
鉛筆が像を結ぶ図を使って、絞りのボケにかかわる役目を確認してみます。
絞りは通常複数レンズの間にいますが、今回は説明を簡単にするためにレンズの目の前においてみます。
絞りは入ってくる光の量を調整するものなので、多すぎる光を減らそうとするとレンズの隅から段階的に光を遮るように動きます。この図の場合にはレンズの上下の光をさえぎります。
するとボケに効いていた図中上下の2本ずつの光がセンサに届かなくなります。結果としてボケ幅が先ほどの幅より小さくなります。図中赤の幅が小さくなっています。
絞れば絞るほど、ピントが合っていない部分の光束の広がりが小さいということになります。
これが被写界深度が絞りによって調整されている仕組みになります。絞れば絞るほどピントが外れている被写体のボケ量が小さくなり、逆に絞りを開ければ開けるほどボケ量が大きくなります。
極端な事をするとレンズを完全に覆って、ピンホールを開けたいわゆるピンホールレンズでは全域でピントが合っているような状態になります。
この図のように、絞りが光の量を調整するためにレンズの外側から段階的に光を遮る機構であるため、ピントが外れている箇所のボケ量がその絞り量によって変わるということになります。
目の悪い人が遠くのもの見るとき目を細めるのも同じ原理です。ちっさい穴を覗いた方がはっきり見えるのもその仕組みです。
レンズに入る光を遮る方法として絞り以外にもNDフィルタを使う手もあります。人でいえばサングラスですね。同じように多すぎる光を減らす効果がありますが、レンズの絞りを変えるわけではないので、シャッター速度を下げながらボケを得る事ができるようになります。
明るい屋外で絞り開放のまま適正露出を得ようと思うとこのフィルタが必要になります。最も最近のカメラは電子シャッターもあるのでそれでシャッター速度を稼ぐのもありだとは思いますが。
まとめ
自分も初めこの絞りとボケの関係がよくわからなったので整理する意味で記事にしました。確信はありませんが、大外しもしてないと思います。
仕組みを理解しようと思っていっぱい線を引きましたが、「レンズの隅まで使うと周りからいっぱい光が入ってきて、ピントが合っていない箇所のボケが大きくなる。」感覚的な理解としてはこんな感じかなと思います。
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